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2005年09月11日更新

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マスターズトーク

ルクルト社製コンパスIIは、面白い!

compass01.jpg先日私の手許にコンパスIIなるカメラが届きました。
勿論ご存じの方も多いと思いますが、もちろん羅針盤ではなくイギリス、ロンドンのコンパス・カメラ社がイギリス人飛行家ノエル・ペンバートン・ビリングというスーパーマリン社(飛行機工場会社)の創立者が設計し1936年から製造された、時計でいうところのコンプリケーションウォッチのようなコンパクトカメラです。

このカメラは、コンパスの産みの親であるノエル・ペンバートン・ビリング氏と、1913年に最初の飛行艇を作ったスーパーマリン社の産みの親であるノエル・ペンバートン・ビリング氏とが、同一人物であるそうで、一事に言うところの車好き、時計好き、カメラ好きは、飛行機好きでもあるようです。《参考資料=高島鎮雄氏のカメラ徒然草集より》

つい最近までジャガー・ルクルト社が発刊する(2004年度版)カタログの始めの方に掲載されており、そちらの紹介によると、《1938年スパイに愛用されたコンパス型ミニチュアカメラは、ジャガー・ルクルトの技術によって生まれました。》と書かれており、“コンパス型”ウム~???と少し戸惑ったりもしておりました。

そんな事はさて置き、このカメラの開発と販売は、コンパス・カメラ社が手掛け、製造はスイス、ル・サンティエにある時計製造会社のルクルト社(後に計器製造会社の“Jaeger.co.,LTD”イェガー社《ジャガー社》と合併してジャガー・ルクルト社[スイスでは、ジャジャルクゥトと撥音するようです]となる)が担当しました。

compass02.jpgスイスの超精密な時計を作る会社が作ったカメラということに宣伝効果もあったようで、1936年より発売が開始されました。
レンズはスイス、アーラウにある有名な光学メーカー、ケルン社製の“CCL3Bアナスチグマット”(アナスチグマート)で、35mm、F3.5の広角で、3郡4枚からなるテッサータイプで、絞りはレンズ向かって、やや左上にある小さなダイアルで、そのすぐ下にある窓より絞り値を出す回転式の構造になっています。D(0)=F3.5、O(2)=F4.5、C(4)=F6.3、B(8)=F16という変則的な4段階のみで、レンズ下に赤文字で刻まれた表示によれば、“D”はダル(曇り)、“O”はオーバーキャスト(薄曇り)、“C”はクリア(晴れ)、“B”はブライト(快晴)の略だそうで、0、2、4、8は露出倍数の表示になっています。
尚、レンズには、周囲に引き出し式3段伸びのレンズフードも付いており超コンパクトカメラにもかかわらずレンズをカバーする装備も怠っていなかったようです。


シャッターのメカニズムは、2段沈鏡胴の1段目の中にぎっしりと詰まっており、これも絞りやフィルターと同様の円盤が回転する方式で、レンズの第2郡と第3郡との間を、スリットをもつ円盤の一部が通過して露出する仕組みになっており、巻上げ時は自動的に閉じており、高速1/500秒から最長4秒半まで、22段階に調節出来るように設計されています。もっとも4秒半ともなると、幾つかのスリットが次々に露出し、その合計タイムが4秒半になると言う訳で、長時間露光は、どうせ静止した被写体を三脚で固定したカメラで撮影するのだからと言う思いきった割り切りの、媚びない設計になっています。

シャッターダイアルは、2段沈鏡胴の第1段(前側)の胴そのもので、シャッター前板のリムに向かって11時の所にある小ダイアルでロックを外してから回し、リムのインデックスの矢印に合わせ、タイム露光の矢印は、別の位置にありシャッターチャージは、リムの12時の位置にある小ダイアルを、親指の腹で回して行う構造になっています。
ちなみにこのゼンマイは、腕時計で用いられる巻上げ用のゼンマイが使われているそうで、指当たりがとても心地よい感触として伝わって来ます。

compass03.jpgシャッター秒数が1/500秒ならほんの少し回せば良いのですが、長くなるにつれて回す量が増え、4秒半ともなると、指の腹で15回ほどギリギリと巻かなければならないので、その場合、静止画像やもしくはそれ相応の状況で三脚使用のもと撮影されるのだからなんら問題は無い考えなのでしょう。シャッターレリーズボタンは、前板に向かって1時と11時の位置にあり、11時位置のボタンが通常のインスタントで、タイムは1時位置にある専用レリーズで開け、11時位置のレリーズで閉じる仕組みになっています。

シャッターダイアルには、秒時のほかに2~22までの数字も刻まれており、これは、ビューファインダーに組み込まれた光学式露出計の数字と符号するようです。尚、レンズキャップを閉じると同時に、二つのシャッターレリーズボタンもカバーされ、不用意にシャッターが切れるのを未然に防ぐように出来ており、このレンズキャップの表面には、回転式の焦点深度表が付いています。

このほかカメラの上面には赤いアルコールに気泡の入った水準器か備えられていたり、左側面には三脚ネジ穴、右側面にはステレオヘッドが備え付けられており、底面には、0-45°-135°-180°と5段階に切り替えられるパノラマヘッド兼用の三脚ブッシュ付きの脚があります。ファインダーはニ眼式で、左端の窓が距離計窓(ほぼ1:1で、基線長は39mmほど)右端の窓が倍率0.5のビューファインダー窓で、このファインダーは、小レバーで横向きに切り替えられるほか、光学式露出計も兼ねています。

何か宝物を扱うような感覚で、6つの面から色々な機能が飛び出して来るようで、カメラメーカーの作るカメラと時計メーカーが作るカメラの違いが、一番体験出来る唯一のカメラでもあると思います。《高島鎮雄氏のすぎたるは及ばざるがごとし、でもやっぱり面白い“コンパスII”より一部抜粋》やはりスイスの時計メーカーが、作ったからなのでしょうか。それともノエル・ペンバートン・ビリングが、これ以上無いコンパクトで多機能なカメラを作ろうと設計されたからなのでしょうか。どちらにしましても、今となっては解りませんが、少なくとも現在でもこれほど多機能且つ超コンパクトで使い辛いカメラは現在でも作られて居無いのは確かです。是非、みんなさんも手にする機会がございましたら、一度ご覧頂けましたらお解り頂けると思います。

『このレバーは?。ここを開けると?。このボタンは?。このダイヤルを廻すと……パズルのような玉手箱のような…、これは、おもしろい!』と。