小柳時計店 ハウスブランド・サントコアⅡ 弊店が独自に製造販売を行う「小柳時計店 ハウスブランド・サントコア」について、その第二弾となる新作「サントコアII」を本年6月より発売いたします。サントコアは、弊店の創業50周年記念モデルである「サントコア ヘリテージ1910」が完 成した2003年よりハウスブランドとして立ち上げました。半世紀にわたり時計店を営み、幾多の時計ブランドを扱ってきた中で、今日までに冷え込んできた日本の時計市場を振り返り、機械式腕時計の存在価値とは...という原点を想い起こしたとき、大手ブランドには依存せずに古典的で味わい深い風合いの腕時計を世に送り出したいという湧き 上がる気持ちからハウスブランドの製造を具現化しました。 そして、「サントコア ヘリテー ジ1910」に続き、第二弾となる「サントコアII」についても、度重なるデザインの改良や 変更、サプライヤーの不慮の廃業、少量生産のため難航した高騰する部材の見直しなど、完成までの道のりは順風満帆ではありませんでした。当初は60周年記念モデル として2008年に第二弾の構想をスタートしましたが、10年の歳月を経てようやく完成に 至りました。「サントコアII」の製造にあたっては、長年にわたりスイスにある数多くの工房を訪れる機会に恵まれていながらも、往年の希少な未使用ムーブメントを入手できるチャンスは年を重ねるごとに希薄になっていると感じていました。 もちろん、現代のコンピュータ を駆使した工作テクノロジーにより生産される高精度のムーブメントも魅力的ですが、手仕事で図面から型を起こし、数々の微細な部品を成形した後に組み立てられていた時代のムーブメントから感じ取れる温かみや存在感に強く惹かれて今に至る時計屋としての心情を払拭できるはずはありませんでした。そのため、まずはオールドムーブメ ントを発掘することから第二弾の企画を始めました。何度もスイスへ赴く度に、昔のムーブメントがデッドストックで眠っていないかどうかを現 地の親しい時計職人や骨董市のディーラーたちに聴いて回る中で、同一の手巻ムーブメントが揃っているかもしれないという情報を得て、ムーブメントのブローカーと会うことができました。 そこでまとまった数量かつ状態の良いムーブメントとして勧められたのは、懐中時計ムーブメントのメーカーとして今も知られているユニタス社が1970年代のわずかな期間に生産していた腕時計用の小型ムーブメントCal.6565でした。このユニ タスCal.6565は、日本の時計メーカーが製造したクオーツ時計の勢いに呑まれ、短命な生産に終わったクオーツショック時代の背景を持つ希少なスイス製ムーブメントですが、このCal.6565の設計段階は、恐らく弊店の後継ぎとして私が誕生した時代と重なっている縁も感じさせるムーブメントでした。
スタンダードなラウンドシェイプのデザインを採用。36mmと32mmの2サイズのあり型を利用、真鍮をベースに成形。3ミクロンのクロームメッキを二度がけした6ミクロン仕上げ。
ステンレススチールをベースにセンターにはムーブメントが眺められるようにミネラルグラス を装填したトランスペアレントバックとなっています。
ドーム型のヘサライト樹脂製で、今日には製造が減少した素材のパーツのため、少量生産はコスト高という逆転現象が起きていますが、古典的意匠には必須のパーツです。
色の基調を1色にしながらマットとミラーの2トーンに仕上げるという、これも手間とコストのかかる製法ですが、この美しさを自作に表現したいという思いも叶えました。
目盛に添わない汎用品をあてがうことは避け、腕時計が存在する以前に懐中時計に見ら れた先端をシェイプさせずに視認性を高めるブレゲ針を2タイプの文字盤サイズごとに型を起こして製造しました。