時計産業に偉大な足跡を残すバルジュー社。1901年、スイスのジュウ渓谷（バレー・デゥ・ジュウ＝バルジュー）に近いル・ビウーが前身であるJ&C.レイモンド兄弟会社が設立され、20世紀の訪れと共にこのエボーシュメーカーの歩みが始まりました。

創業者レイモンド兄弟により世に送り出されたムーブメントは多くの高級時計メーカーによって採用され、その名は世界の時計愛好家だけに留まらず、広く知られる事となりました。1944年にムーブメントのより良い高級化を目指しエボーシュSAの傘下となった後、ETAに統合される1982年までに多くの優れたムーブメントを製造して来ていました。

現在も多くの時計に採用されるバルジュー社のムーブメントは、見る者の心をとらえて離さない精密な芸術美があります。
単なる機械という枠を越えた造形が、高級時計の心臓部として今も時を刻み続けています。

Cal.23は1916年から1974年の58年間で126,582ピース製造された17石、18000振動（1960年代以降21600振動の変更によりチラネジ無しの天輪が採用されました。）の直径29.33mmの平ヒゲぜんまいを使用した2カウンターコラムホイール式クロノグラフで、また一方のCal.72は1946年から1974年の28年間で261,558ピース製造された（この内、1948年より製造が行なわれたCal.72にデイト機構を搭載したCal.72Cも含まれています。）17石、18000振動の直径29,33mmでブレゲヒゲを使用した3カウンターコラムホイール式クロノグラフでした。

このような経緯を持つ時計職人チャールズ・レイモンドはその完成度の高さから、1930年代から1950年代にかけてロレックスやルクルト、パテックフィリップ、ミネルバ、ロンジン、ブレゲといった高級ブランドに採用された実績を持っています。しかし、50年以上の歴史を持つムーブメントとしては異例の少量生産でした。

無理のない完成された構造であるが、総生産個数から当時としても量産出来るムーブメントでなかった事が伺えます。
このような稀少さから現在も時計愛好家にとっても垂涎の的となっています。

そのバルジュー社が生み出して来た数々の名作ムーブメントの中でも、“Cal.22”は歴史的名品とされています。1914年に創立者チャールズ・レイモンドによって生み出された“Cal22”はコラムホイールやチラネジ付天輪等を持つクロノグラフムーブメントで、Cal.23やCal.72、Cal.72Cと言った高級クロノグラフムーブメントの前身となった、直径32mmの時板にゆとりのあるスペースでそれぞれの部品が構成された、輪列や振動数の面からも耐久性、安定性共に富んだクロノグラフ用のムーブメントと言えるでしょう。